中国最大の経済都市・上海市は新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、3月28日からロックダウンが始まり、2ヶ月ほど経っていました。5月中旬以後、操業再開を許可された企業がありますが、2500万市民の大半は依然外出を禁止されています。

上海のロックダウンは中国経済にどのくらいの影響があるのか、各データに基づき分析しました。

上海ロックダウンの経緯

今回の上海ロックダウンの経緯について、下記大まかに整理してみました。

●3月1日 (新規陽性者1人確認)

●3月12日 上海は「中危険性地域」と認定、市内全ての小中学校幼稚園は閉鎖

●3月13日 大学は閉鎖管理

●3月17日 上海市政府関係者は「上海はロックダウンしない、する必要はない」と発言

●3月19日 (新規陽性者8人、無症状者366人)

●3月20日 上海ディズニーは21日から営業中止

●3月22日 浦東地区は「静態管理」(在宅勤務、生活必需品以外の店は営業停止)

●3月28日 浦東地区はロックダウン開始、96時間実施予定

●3月30日 (新規陽性者326人、無症状者5656人) 全市「静態管理」、全員PCR検査

●4月1日 浦西地区はロックダウン開始、96時間実施予定

●4月4日 (新規陽性者425人、無症状者8581人) 全市ロックダウン継続、全員PCR検査

●4月6日 住民による「团购(共同購入)」が開始

●4月11日 封鎖区、管理区、防范区の3つの等級による管理が実施

●4月15日 (新規陽性者3590人、無症状者19923人)→今回のピーク

●4月22日 「上海 四月の声」との約5分間の動画が拡散(数日以内に完全削除)

●4月25日 (新規陽性者1606人、無症状者11956人)条件付きで上海を離れることが可能に

●4月30日 市中感染ゼロが実現      

●5月10日 (新規陽性者234人、無症状者2780人)

●5月13日 市内重点企業の活動再開状況を発表

●5月13日 バス・地下鉄の運行再開

●5月25日 (新規陽性者48人、無症状者290人)

上海のロックダウンは、市民の外出を原則禁止、工場は操業停止、外食は閉店、企業は在宅勤務となり、住宅の小区毎に管理されています。PCR検査を受ける時だけ、小区の検査所まで外出することが可能です。地下鉄やバスなど、全ての公共交通機関の運行がストップとなり、通りには人影が全く見られません。まるでゴーストタウンのような状態です。

2022年2月26日から5月25日まで、上海市内で確認した新型コロナ感染者数は累計57867人、新型コロナによる死亡者数は587人でした。

しかし、医療体制の崩壊で手術を受けられなくなくなった人、血液透析ができなくなくなった人、食料品の共同購入ができなく餓死した人、希望を失って自ら命を絶った人、、一体どのくらいいたのか、恐らく公表されることはないでしょう。

統計データから見る中国経済

先月、中国国家統計局は2022年第1四半期のGDPを発表されました。物価の変動を除いた実質で前年同期比は +4.8%となり、2021年第4四半期よりやや回復基調が見られましたが、上海のロックダウンの影響で第2四半期は再びマイナス圏に突入するか、要注目です。

中国四半期別GDP成長率推移
中国四半期別GDP成長率推移

※中国統計局のデータに基づき、弊社が作成

国家統計局の付凌暉報道官は、記者会見で「外部の不安定さと不確実性が増していることや、国内の感染拡大など予想していなかった突発的な要因で経済の下押し圧力が強まっている。金融面での実体経済への支援とマクロ経済政策の実行力を強化する」との認識を示しました。

4月19日、国際通貨基金(IMF)は、中国の2022年通年のGDP成長率を、前年比4.4%と発表し、1月時点の4.8%から0.4ポイント下方修正しました。

3月の全国人民代表大会で設定した2022年の成長率5.5%は必達目標ではないですが、今のゼロコロナ政策だと、景気下振れ圧力はさらに高まるでしょう。

上海ロックダウンによる経済損失

ロックダウンが実施される前の上海2021年のGDPは、4.3兆元(約86兆円)であり、中国全体の約4.5%を占めています。1日平均118億元(約2360億円)で単純計算すると、1ヶ月間のロックダウンで約3540億元(約7兆円)の経済損失となります。(実際には政府支出での食料品調達、配給、物流、PCR検査などが行われており、ゼロにはなりません。)

試算方法はいろいろありますが、感覚的には経済全体の7-8割が飛んでいったのではないかと推測します。

上海統計局のデータによると、上海市の一定規模以上企業(年間売上高2000万元以上の企業)の工業総生産の成長率は、3月 -7.5%、4月 -61.5%と悲惨な結果となりました。

上海一定規模以上企業の工業総生産成長率推移

※上海統計局のデータに基づき、弊社が作成

5月13日、上海市の経済・情報化委員会は市内重点企業の活動再開状況を発表し、上海市内一定規模以上企業の以上の製造業9000社のうち、約5割に当たる4400社が生産を再開しました。自動車産業は、上海汽車乗用車、上汽通用汽車、上汽大衆、テスラの4社が通常生産を再開し、安定的に稼働しています。

しかし、上海には約50万の法人(2020年末のデータ)があり、うち9割以上が中小企業となり、その多くはいまだに通常稼働できていない状態です。

5月16日、上海市自動車販売業協会が発表した4月の自動車販売台数は、なんと「ゼロ」台でした(2021年4月は26,311台)。ロックダウンが続いているなか、5月の自動車販売も全く期待できません。

中国経済の約4分の1を占めている不動産業も、旅行、外食、交通運輸およびサービス産業も同じような状況になります。

また、4月の上海貿易総額は 2191億元(約 4.2兆円)、前年同期比は -36.5%、そのうち、輸出は -43.8%、輸入は -32.5%、一気に悪化しました。

上海には、金融、国際貿易、物流、サプライチェーンなど多くの機能があり、1都市のロックダウンは後に、上海周辺、中国全土、最終的に世界に悪影響が出るに違いありません。

おわりに

先日、上海のロックダウンは6月中旬に全面解除の可能性を示されましたが、新型コロナウィルスの再流行を防ぐために、日常的なPCR検査の実施、都市間の移動制限、部分的な行動制限などは当面継続されるでしょう。

「保护人民生命安全和身体健康可以不惜一切代价(人民の生命安全と健康のために、あらゆる代価を惜しまない)」と宣伝されていますが、今回のロックダウンは、一人一人の国民にとっても中国経済にとっても、その「代価」は計り知れません。

2ヶ月にわたる上海のロックダウンは、消費者(特に中間層)の先行き不安をかき立て、購買意欲を大幅に低下させ、消費のダウングレードを誘発する可能性が大きく、中国政府は経済立て直しの厳しい現実に直面しています。

「伤筋动骨一百天(筋骨を痛めると100日では直らない)」との言い方があり、今回の上海ロックダウンは中国経済の大腿骨が骨折したようなもので、そう考えると、体力が回復するまで相当時間がかかるのではないかと思います。