中国ロボット産業は、世界で最も成長している市場の一つであり、近年急速に発展しています。中国政府は、ロボット産業を重要な成長産業の一つと位置づけて、国家レベルの政策で市場形成を促進しています。今回、中国ロボット産業について簡単に整理してみました。

※本稿はiiMedia Researchのデータを参考に作成したものです。

中国ロボット産業の市場規模

iiMedia Research のデータによると、中国のロボット産業の市場規模は 2021 年に 1306 億万元(約2.5兆円)に達しています。2022年からCAGR約29%の高い成長率で成長し続け、2027 年には、2021年の約4.5倍の6000 億元(11.7兆円)に達すると予想されています。

背景には、国家の「中国製造2025」や「知能製造」などの国家政策の下で、ロボット関連技術への投資が拡大し、関連応用分野も拡大していると考えています。

ご参考に日本のロボット市場は、2019年には約2.1兆円と推定され、2025年には約3.6兆円に達する見込みです。(富士経済)

中国ロボット産業の概況

中国のロボット市場は、大きく産業用ロボット、サービスロボット、特殊ロボットなどに分類されています。

産業用ロボットは、自動車産業、電子産業、食品加工業、医療機器産業などの生産ラインにおいて広く使用されています。2019年には、中国の産業用ロボット市場は、総出荷台数で約15万台、市場規模で約400億元(7800億円)に達しました。これは世界市場の約36%を占めており、世界最大な市場となりました。

サービスロボットは、配達ロボット、掃除ロボット、配膳ロボット、介護ロボットなどがあり、急速に成長しています。特に高齢化社会が進む中、介護ロボット市場は今後ますます重要な市場になると予想されています。2019年には、中国のサービスロボット市場は、総出荷台数で約7万台、市場規模で約83億元(1600億円)に達しました。

特殊ロボットは、原子力、宇宙、軍事などの分野で使用されているロボットです。中国の原子力産業は、近年発展しており、原子力発電所の建設やメンテナンスには多数のロボットが使用されるようになっています。

最近では、人工知能やブロックチェーン技術といった分野との融合が進んでおり、より高度なロボット技術の開発や、さまざまな分野でロボットの活用が期待されています。

中国ロボット産業の基本トレンド

トレンド 1:政策と技術に後押しされて、中国のロボット産業は黄金時代を迎える

現在、中央政府はデジタル経済と実体経済の融合、中小企業のデジタル変革、産業用ネットの発展を促進しています。ロボット産業における国家政策の焦点は、コア技術のブレークスルー、市場アプリケーションの促進、産業サプライチェーン安定性の向上などです。中国のロボット産業の市場規模は 2027 年に 6000億元近くになると予想され、2021 年から 2027 年までの複合成長率は 約29%になり、中国のロボット産業は発展の黄金期を迎えるでしょう。

トレンド 2:アプリケーションが拡大し、サービスロボットの開発が加速する

新型コロナウィルスの発生以来、さまざまな業界で人の代わりになるロボットへの需要が、高まってきました。ピッキングロボット、配達ロボット、掃除ロボット、配膳ロボットなどが、倉庫、物流、ホテル、飲食などで活躍するようになってきました。サービスロボットへの投資も盛んになり、2021年には関連企業が10万社を超えて、中国は世界最大のサービスロボット市場になりつつあると考えています。

トレンド 3:協働ロボットは今後大きく発展する

ロボット導入の主な目的は、人件費の節約と反復作業の削減の二つと言われています。人と同じ空間で協働作業するために作られた「協働ロボット」が登場し、導入コストを大きく抑えて導入できるとの利点があるため、次々と導入が進んでいます。協働ロボットの最大の特徴は、人と接触したらすぐに停止したり、動くスピードを抑えたりといった機能を搭載している点にあります。設置環境に柵やエリアセンサーなど安全性を確保する設備が十分になくても、安全な運用が可能です。協働ロボットは中国に限らず、世界ロボット市場でも大きく成長するセグメントであると見ています。

中国ロボット市場を拡大させるには

中国ロボット市場では、外資系企業は市場全体の約7割を占めていますが、中国系企業は近年特にサービスロボット、一部低価格帯の産業用ロボットの分野で台頭しています。

日本のロボットメーカーは中国市場を拡大させるには、以下のような取り組みが考えられます。

●高品質・高性能な製品の拡大

高い精度と信頼性が求められる自動車産業では、日本の製品は競争優位性も信頼性も非常に高いです。日本メーカーは、高性能・高品質な製品を更に投入することで、顧客から信頼を得ることができます。

●現地販売・サポート体制の充実

各社は既に取り組んでいますが、中国市場での販売・サポート体制を整備し、迅速なサポートサービスを提供することが重要です。中国の企業とのパートナーシップを構築し、直販だけではなく、代販のチャネルと広いネットワークを活用するのは効率的だと考えます。

●地域・産業の特性に合わせた製品開発

中国市場には、地域や産業ごとにニーズが異なるため、それに合わせた製品が求められます。海外での開発生産より、現地に開発センサーや生産拠点を置き、製品の開発・製造をローカライズしたほうが効率良いのでしょう。、ファナック、三菱電機、ヤマハなどの日系メーカーは現地で開発および生産を取り組んでいます。

●ローカルパートナーの構築

ロボット産業に限らず、中国でビジネスを展開するためには、ローカルパートナーとの連携が必要です。ローカルパートナーは、中国のビジネス環境に詳しく、政府との関係を持っていることがあります。そのため、ローカルパートナーの協力を通じて、政府と良い信頼関係を構築することができます。また、政府関係者とのコミュニケーションを積極的に行うことも重要です。

これらの取り組みを進めることで、日本メーカーは中国市場での競争力を強化し、市場を拡大していくことが可能と考えます。