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【中国経済】2025年中国経済の総括:構造転換の痛みと新質の生産力の始動

中国自動車市場
呉 勝龍
12月 23, 2025

2025年は、中国が「世界第2位の経済大国」としての立ち位置を維持しつつ、内外の構造変化・課題が露呈した年でした。政府は5%前後の成長目標を掲げましたが、成長の原動力は輸出中心の構造が色濃く、消費回復や投資拡大の持続性には不透明感が残りました。本稿では、マクロ経済、産業動向、そして象徴的な企業事例の3つの視点からこの一年を振り返ります。

1. 中国マクロ的な経済状況と動向: デフレ圧力との戦いと政策の総動員

2025年のマクロ経済は、一言で言えば「期待と現実のギャップ」に直面した期間でした。

  • 経済成長率(GDP):  第1四半期こそ 5.4%と好調な滑り出しを見せましたが、後半にかけては不動産不況の長期化と消費マインドの冷え込みにより、通年では4.8%〜5.0%程度に着地すると予想されています。
  • 「超緩和」への舵切り:  2024年末に発表された「穏健かつやや緩和的(温和放款)」な金融政策に基づき、2025年は異例の利下げや預金準備率の引き下げが相次ぎました。また、地方政府の債務借り換え(10兆元規模)が本格化し、システムリスクの回避に全力が注がれました。
  • 消費の二極化:  政府による「家電・自動車の買い替え促進策(以旧換新)」は一定の効果を上げましたが、不動産価格の下落に伴う逆資産効果が重くのしかかり、高額消費や贅沢品市場は苦戦を強いられました。
  • 物価と投資環境: 物価は緩やかなデフレ圧力下にあり、投資と消費は低迷傾向が続きました。また、外国直接投資(FDI)は中国内でやや減少し、海外進出企業の経営環境の変化も反映されました。

2. 主要産業の動向: NEV、ロボット、ハイテクが市場を牽引

不動産や建設業などの産業が停滞する一方で、習近平政権が提唱する「新質の生産力」を象徴する分野(自動車、ロボット、ハイテクなど)が経済の下支えとなりました。

  • 自動車産業: 新エネルギー車(NEV)の国内浸透率はついに50%を常態化させました。2025年は「海外生産元年」とも言われ、BYDや広州汽車(GAC)などが東南アジアや欧州での現地生産を本格化させ、輸出依存からの脱却を図る動きが加速しました。しかし、過当競争(内巻)が続き、設備稼働率や利益率の低迷が課題になっています。
  • 人型ロボット・AI: 2025年は「人型ロボット量産元年」となりました。自動車工場での実戦投入が進み、製造現場の自動化率が劇的に向上。AIとの融合により、単純作業から汎用的な作業へと応用範囲が広がりました。中国企業は先端AIや自動化技術において国際競争力を高めつつありますが、収益面の課題と、センサー・ソフトウェア面の課題が依然として存在しています。
  • 半導体・ハイテク製造: 米中対立による輸出規制が強化される中、国内サプライチェーンの「自主可控(自主管理可能)」を目指す投資が継続。特にレガシー半導体やハイテク製造装置での国産化率が向上しました。

3. 経済影響力の高い事例: 淘汰と再編が加速する現場

2025年は、市場の飽和と過当競争(価格戦)の結果として、象徴的な動きが目立ちました。

  • 不動産大手の再編と清算: 過去数年の不動産不況を受け、一部の中堅デベロッパーの法的整理や、国有企業による資産買収が一段と進みました。これは「不動産依存脱却」の最終段階とも言えます。(例、中国万科(Vanke)が債務再編中)
  • 外資メーカーの撤退と戦略転換: 中国メーカーの圧倒的な低価格・高機能戦略に押され、日系を含む外資系自動車メーカーや家電メーカーが拠点の集約や、中国事業の「合弁解消・完全子会社化」など、大きな決断を迫られた事例が相次ぎました。その反面、トヨタのbZ3Xや日産のN7など中国で躍進している外資系メーカーの商品も存在しています。
  • 新興EV・ロボット企業の合弁・提携: フォルクスワーゲン(VW)やステランティスなどが中国の新興EV企業への出資を強化したり、技術供与を受ける「リバース・合弁」の動きが定着し、中国の技術を世界へ展開するための足場固めが進みました。こうした動きは外資企業が中国市場においてより柔軟な戦略を模索する流れを示し、単純な撤退ではなく提携形態の変化として捉えられるケースも多いと言えるでしょう。

総括:構造転換の岐路に立つ中国経済

2025年の中国経済は、次のような特徴を示しました。

  • 成長維持はしたものの、内需の弱さや構造的な課題が顕在化
  • 主要産業は国際競争力を維持・強化しているが、利益率や収益性の問題にも直面
  • 倒産・再編・合弁といった企業レベルでの動きが経済全体に影響を与えている

2025年の振り返りから見えるのは、中国市場がもはや「量」を追う場ではなく、世界最先端の「技術とコストの戦場」に変貌したということです。

2026年に向けては、この変化を前提とした、より機動的で現地に特化した戦略の再構築が求められているでしょう。



弊社は、中国消費者の嗜好変化や市場構造の転換を継続的に調査しており、こうしたデータに基づく「現地適合型商品戦略」「中国国家標準対策」の策定支援を行っています。中国の様々な産業動向についてもっと知りたい場合、下記問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。

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