2026年は、中国にとって「第15次5カ年計画(15・5計画)」が始動する年です。従来の不動産・インフラ依存型成長から、ハイテクを柱とする「新質生産力」への転換が加速する中、日本企業が注視すべき6つのポイントを整理します。
1. 政治イベント: 全人代が描く「2030年への青写真」
2026年3月の全国人民代表大会(全人代)が北京で開催され、今後5年間の国の方針を決定する大きな政治イベントとなります。また、2027年に中国共産党大会を控えていることがあり、2026年の中国経済は大きく成長率を引き上げるよりも、社会的リスクを抑え込む運営が中心になると予想されます。
- 第15次5カ年計画の公布: 2026年から2030年までの成長目標(4.5%〜5%程度か?)や、重点産業(AI、ロボティクス、量子技術、クリーンエネルギーなど)の促進政策などが発表されます。
- 社会的安定の重視: 2027年の共産党大会を翌年に控え、社会の安定と雇用の確保が最優先事項となります。過剰生産と過当競争の是正(反内巻)が進められ、各産業の健全化が図られる見込みです。
2. マクロ経済とデフレ圧力: 経済成長率4%台への「計画的減速」
2026年において、大規模な景気刺激策が実施される可能性は高くありません。2026年の実質GDP成長率は、4.1%〜4.8%前後に落ち着くと見られています。
- デフレ圧力との長期戦: 消費者物価指数(CPI)は0%〜0.5%程度の低空飛行が続きます。不動産価格の下げ止まりが遅れる中、企業は価格競争の激化と利益率の低下に直面し、極めて厳しい経営を強いられます。EV、バッテリー、ロボットなど一部産業の輸出は経済の下支えになると見ています。
3. 消費者マインドの変化: 「理性的消費」と「シルバー経済」
2026年、若年層では、将来不安を背景に「必要なものしか買わない」行動が一般化する傾向が見られるでしょう。一方で、医療、健康、低価格帯ブランド、近距離旅行など、実生活に直結する分野では底堅い需要が見込まれます。
- K字型消費の定着: 必需品には徹底的な安さを求める一方で、健康、教育、体験といった「自己投資」には支出する二極化が進みます。高額消費の回避、貯蓄志向の定着、コストパフォーマンスの重視が2026年一般消費のキーワードになると考えられます。
- シルバー経済の爆発: 急速な高齢化により、シニア層向けのレジャー、ヘルスケア、スマート家電市場が急拡大します。日本の介護ノウハウは依然として高い競争力を持ちます。
4. 外資企業の動向: 「In China, for China」の徹底
2026年、大半の外資企業は中国市場に対してより慎重な姿勢を取り、新規大型投資は限定的で、既存事業の効率化と事業再編、中国事業の位置づけの見直しが加速するでしょう。そのなかで、R&D の現地化、サプライチェーンの分離が進むと予想されます。
- R&Dの現地化: 中国の爆速のイノベーションスピードに追いつくため、一部の研究開発拠点を中国に置き、意思決定の権限を現地に譲渡する企業が生き残ります。
- サプライチェーンの分離: 中国向けは中国国内で完結させ、欧米輸出向けは他国へ分散させる「二重のサプライチェーン」構築が一般化します。
5. 日中関係の行方: 政冷経冷が継続
2026年の日中関係は、全面的な改善にも急激な悪化にも進みにくい、管理された安定関係が続く可能性が高いです。
- 高市政権と「台湾有事」発言の影響: 日本側の強い姿勢に対し、中国側は「歴史問題」や「台湾問題」を盾に反発を強めています。政治的な冷え込みが2026年も続くと予想されます。
- 経済的対抗措置のリスク: 公式な制裁だけでなく、観光客の制限、不透明な通関遅延、日本製品へのボイコットといった「インフォーマルな経済的威圧」が再発するリスクが高まっています。
- 限定的な対話: 一方で、経済的な相互依存は依然として深く、環境保護や介護、金融などの特定分野では実務的な対話が維持される「政冷経冷(一部微温)」の状態が続くでしょう。
6. 日本企業が取るべき戦略
中国側にとっても、日本は依然として重要な投資・技術パートナーであり、経済関係の断絶は現実的ではありません。日中間の地政学的な不安定さを前提とした、機動的なリスク管理が求められます。日本企業にとって重要なのは、「撤退か継続か」という二者択一ではなく、中国事業戦略の再設計が最重要な課題となります。
- 中国市場の再定義: 中国市場はすでに高速成長市場ではなく、競争の激しい成熟市場として位置づけ、価格競争に巻き込まれやすい分野から縮小・撤退の判断を行いながら、事業ポートフォリオの選別・整理が必要となります。
- チャイナリスクの低減: 中国市場への過度な依存を避けつつ、中国国内で得た先端技術やデジタルノウハウを、東南アジアや日本国内へフィードバックする「リバース・イノベーション」の仕組み作りが重要です。
- B2B・ニッチトップ戦略: 一般消費財での価格競争を避け、中国メーカーが代替できない「コア部材」「製造装置」「環境技術」など、B2Bにおける優位性を守り抜くことが生存戦略となります。
おわりに:2026年は「中国との付き合い方」を再定義する年
2026年の中国市場は、もはや「容易に利益が上がる場所」ではありませんが、中国市場が突然消えてしまうわけでもありません。中国経済は低成長でも巨大な市場であり、激しい競争の中に市場機会は確実に存在している状況です。
日本企業にとって2026年は、
「中国からどう儲けるか」ではなく、「中国とどう付き合い続けるか」を再定義する年になるでしょう。
弊社は、中国消費者の嗜好変化や市場構造の転換を継続的に調査しており、こうしたデータに基づく「現地適合型商品戦略」の策定支援を行っています。中国の様々な産業動向についてもっと知りたい場合、下記問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。